ベテランの方なら、これくらい分かるし馬鹿にするなという方もいらっしゃると思います。
しかし、初めて選任される方には色々と不安もあります。
この記事では、初めて電気主任技術者に選任される方、電気主任技術者業務の再確認をしたい方向けに、電気主任技術者業務と基礎知識について記事を書かせていただきます。
資格取得に関する電気主任技術者は↓
こちらの記事で紹介させていただきましたので、まだ電気主任技術者を取得されていない方はご確認いただけるとうれしいです。
電気工作物とは、電気を供給するための発電所、変電所、送配電経路をはじめ、工場、ビル、住宅などの受電設備、屋内配線、電気使用設備などの総称をいいます。
電気工作物についての表を以下にまとめさせていただきました。
電気工作物 電気を供給するための発電所、変電所、送配電経路をはじめ、工場、ビル、住宅などの受電設備、屋内配線、電気使用設備などの総称 | ||||
---|---|---|---|---|
事業用電気工作物 電気事業用や自家用鵜電気工作物の総称 | 一般用 電気工作物 一般住宅や小規模な店舗、事業所などの電圧600V以下で受電する場所の配線や電気使用設備など | |||
電気事業用 電気工作物 電気事業者の発電所、変電所、送電経路、配電経路など | 自家用電気工作物 一般用及び電気事業用以外の電気工作物 (工場やビルなどのように、電気事業者から高圧以上の電圧で受電している事業場等の電気工作物) | |||
工場棟の需要設備以外の発電所、変電所など | 需要設備 | |||
最大電力 500kW以上のもの | 最大電力 500kW未満のもの | |||
電気主任技術者の資格範囲 | 電気主任技術者と電気工事士の資格範囲 | 電気工事士の資格範囲 |
電気事業用電気工作物は、基本的に各地方の電力会社になります。
ほとんどの電気主任技術者は【自家用電気工作物】の範囲で選任されています。
後で解説しますが、「最大電力500kW未満」の需要設備については、条件がありますが【電気工事士】でも選任可能です。
一般用電気工作物、事業用電気工作物において、以下の関係法令の適用があります。
法律 | 一般用電気工作物 | 事業用電気工作物 | |
---|---|---|---|
電気事業法 | 600V以下で受電 小出力発電設備 | 600Vを超える電圧で受電 500kW未満の需要設備 | 発電所、変電所、送配電線路、500kW以上の需要設備 |
送配電電気事業者に対する一般用電気工作物調査義務 | ― | ●工事計画届(1万V以上の需要設備の新設・受電用遮断器の取り換えなど) ●使用前自主検査の実施、定期事業者検査の実施 ●安全管理審査の受審 | |
●保安規定届 ●電気主任技術者選任 ●電気事故報告 ●技術基準維持義務 | |||
電気工事法 | ●電気工事士でなければ、電気工事をしてはならない | 1種電気工事士でなければ、自家用電気工作物の電気工事をしてはならない | ― |
●電気工事士は、電気設備技術基準を遵守しなければならない | |||
電気工事業法 | ●営業所に主任電気工事士を置かなければならない | ◎自家用電気工作物の工事のみを営む場合は、国(県)に通知しなければならない | ― |
●営業所を登録しなければならない(◎の場合を除く) ●電気工事士でないものに、電気工事を行わせてはならない ●電気工事士に違法電気用品を使用させてはならない | |||
電気用品安全法 | ●電気工事士は、所定の表示のない電気用品を使用してはならない | ●自家用電気工作物設置者、電気事業者及び第1種電気工事士等は、所定の表示のない電気用品を使用してはならない | |
〇電気用品の製造又は輸入業者(届出業者)は、電気用品が電気用品の技術基準に適合することを確認しなければならない 〇届出業者は、電気用品の技術基準に適合することを確認しなければならない。 〇届出事業者及び販売業者は、所定の表示が付された電気用品でなければ販売してはならない |
電気主任技術者の適用範囲は、電気事業法の部分になります。
電気主任技術者の保安体系は以下のようになります。
電気工作物 | ||||
---|---|---|---|---|
事業用電気工作物 (事業の用に共する電気工作物) (自家用電気工作物) | ||||
自主保安体制 | ||||
技術基準の 適合維持義務 | 保安規定の 作成,届出,遵守 | 主任技術者の 選任,届出,外部委託 | 法廷事業者 検査 | 使用前自己 確認 |
第39条 | 第42条 | 第43条 | 第51条 第55条 | 第51条の2 |
設置者は、自らが自己責任のもとに電気の保安を確保する義務があり、電気事業法の規定により以下のことを行う必要があります。
条文 | 義務 | 概要 |
---|---|---|
39条 | 技術基準適合維持 | 設置者は、事業用電気工作物を経済産業省令で定める技術基準に適合するように維持する |
42条 | 保安規定の制定、届出、遵守 | 設置者は、事業用電気工作物の工事、維持及び運用に関する保安を確保するために保安規定を定め、経済産業大臣に届け出ること。 ま、設置者及びその従業者は保安規定を守る |
43条 | 主任技術者の選任、届出 | 設置者は事業用電気工作物の工事、維持及び運用に関する保安の監督をさせるために主任技術者を選任し、経済産業大臣に届け出る |
※主任技術者のうち、電気主任技術者は全ての事業用電気工作物について選任しなければならない。
※電気事故が発生した場合は事故報告、廃止した場合は廃止報告、受電電圧1万V以上の需要設備、ばい煙発生設備等を設置する場合は工事計画の事前届け出を行う必要があります。
事業用電気工作物を設置するものは、事業用電気工作物を主務省令で定める技術基準に適合するように維持しなければならない。
堅苦しい話の前に、保安規定には何種類かあるのをご存知でしょうか?
の4種類あります。
皆さんの現場の保安規定は何色ですか?
さて話を戻しまして、
保安規定は電気工作物の工事、維持及び運用に関する保安を確保するために設置者が定め、経済産業大臣へ届出るものです。
【設置者及びその従業員は保安規定を遵守しなければならない】と定められています。
保安規程は、自家用電気工作物の設置者ごとに作成するのが原則です。
保安規程の制定又は改正に当たっては当然のことながら電気工作物の工事、維持及び運用に関する監督を行う主任技術者の意見を十分に反映させるようにしなければなりません。
保安規定には以下の表に定める事項を記載します。
工事・維持・運用 |
|
---|---|
運転・操作 |
|
災害時 |
|
記録保存 |
|
その他 |
|
電気主任技術者とは、保安規定に則り保安監督業務を行うものです。
設置者は電気工作物の工事、維持及び運用に関する保安の監督をさせるため、電気主任技術者を選任し、経済産業大臣に届け出なければならない。
電気主任技術者は、事業用電気工作物の工事、維持及び運用に関する保安の監督の職務を誠実に行わなければならない。
電気工作物の工事、維持及び運用に従事する者は、電気主任技術者がその保安のためにする指示に従わなければならない。
電気主任技術者には「第一種、第二種、第三種」の三種類あります。
第一種 | 全ての電圧 |
---|---|
第二種 | 170kV未満の電圧 |
第三種 | 50kV未満の電圧 |
大体の事業所は6.6kVなので「第三種電気主任技術者」でまかなうことができます。
データセンターや大規模な工場などは66kVのため、「第二種電気主任技術者」が必要になります。
原子力発電所になると「第一種電気主任技術者」が必要です。
主要電気工作物の更新を行うには、工事計画を届け出なければなりません。
対象の主要電気工作物については、以下経済産業省資料をご確認ください。
経済産業省のホームページ。電気使用安全月間(8月)について。 主要電気工作物を構成する設備を定める告示について(METI/経済産業省) – |
例として、
ご自分の管理されている設備であてはまるものがないか、今一度ご確認ください。
工事計画から安全管理審査までの流れは、以下の表のようになります。
工事計画届 | → | → | → | 工事完了 | → | 使用前自主検査 | 検査合格後
→
| 使用開始 | → | 使用前安全管理審査申請 | → | 使用前安全管理審査 |
→ | 工 | → |
電気主任技術者を選任する形態には【原則】と様々な【例外】が存在します。
『自社従業員』で『常時勤務』している『有資格者』を選任しなければならない。
ビルメンとして働いている方の中には???となっている方もいらっしゃるのではないでしょうか?
原則としては上記の通りとなります。
しかし、ほとんどのビルメンは請負として働いているわけですから、【原則】には当てはまりません。
大体のビルメンを職種として選任されている方の形態は、様々な【例外】の一部となります。
『自社従業員』の例外 | 条件クリアすると ➡ | 外部選任 |
『常時勤務』の例外 | 兼任承認 | |
『有資格者』の例外 | 選任許可 |
という形になります。
事業場に常時勤務している自社の従業員を選任する場合は、【原則】に当てはまる為、問題なく選任の届出が可能です。
正社員と同等以上の勤務実態(週5日間×8時間を目安)としています。
※就業規則により時間は異なります。
事業場に常時勤務している他社の従業員を選任する場合は、【例外】に当てはまり、委託契約に条件があります。
委託契約には以下のイ~ハに揚げる条項が約されている必要があります。
イ.設置者は主任技術者の意見を尊重する
ロ.保安に従事する者は主任技術者の指示に従う
ハ.主任技術者は職務を誠実に行う
1人が複数の事業場を兼任する場合は、国に事前申請が必要となります。
また、事業場や設備などに条件があります。
上記全てを満たす必要があります。
常時勤務する電気主任技術者免状の未取得者を選任する場合は、国に事前申請が必要となります。
また、事業場や設備などに条件があります。
一定の条件を満たす個人または法人に保安管理業務を委託する場合は、国に事前申請が必要となります。
また、事業場や設備などに条件があります。
電圧7kV以下の需要設備
設置者は、選任後延滞なく【主任技術者選任または解任届出書】を提出しなければいけません。
電気工作物の設置者は、事故の発生を知った時から以下のような報告を、管轄する産業保安監督部長に対して行うことと規定されています。
報告期限 | 報告の方法 |
---|---|
24時間以内(速報) | 様式に必要事項を記入後、担当窓口までFAXを送信 |
30日以内(詳報) | 様式に必要事項を記入後、担当窓口まで電話し、原則として持参する。 |
電気関係報告規則第3条に該当する電気事故は報告義務があります。
報告が必要となる主な電気事故は以下のものがあります。
詳しく解説します。
自家用電気工作物の破損、誤操作、操作しないこと等により、電気事業者に供給支障を発生させた事故のことをいいます。
ただし、
となります。
自家用電気工作物が設置されている事業場内において、電気工作物による関電、電気工作物の破損や誤操作等により、人が死傷した事故をいいます。
自家用電気工作物が設置されている事業場内において、設備、配線等の電気工作物に漏電、短絡等の電気的異常が発生し、火災となった事故をいいます。
上記の条項号に該当する場合、事故報告の対象となります。
2016年(平成28年)から追加された項目になります。
上記のような事象が該当となります。
電気事業法第百七条第3項に【立入検査】について記載されています。
立入検査での確認事項には
があります。
立入検査は年に【4~50事業場】への立入検査が実施されています。
立入検査を行う事業場は、主に下記のような事業場になります。
この記事では、
について解説させていただきました。
電気主任技術者は取得するのに、とても苦労する資格です。
取得してからの業務も多忙で、責任も重いことが分かっていただけたのではないでしょうか?
また、電気主任技術者は保安規定を理解する必要がありますので、今一度、ご自分の事業所にある保安規定を見直してみてはいかがでしょうか。
資格取得に関する電気主任技術者は↓
こちらの記事で紹介させていただきましたので、まだ電気主任技術者を取得されていない方はご確認いただけるとうれしいです。
少しでも参考になっていただけたら嬉しいです。
では、ぶちキリンでした。
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電気主任技術者に選任されるにあたり、おすすめの参考書を紹介させてください。
この5冊は分かりやすくとてもおすすめです。
第1巻:受電設備のしくみ
第2巻:日常点検
第3巻:精密点検・停電点検
第4巻:トラブル事例
第5巻:計画・竣工検査・異常時の対応など
初心者としては、写真入り、図入りで丁寧に解説されており、図面と見比べながら、実際の受電室を思い浮かべることができる参考書です。
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